カンボジア・水上集落実測調査
カンボジア・トンレサップ湖に浮かぶ水上集落。
トンレサップ湖は、雨季には乾季の水域面積の3倍以上に広がり、10m以上の水位の変化が見られる。また、この湖は豊かな漁場でもある。この村落は、トンレサップ湖の水上に位置し、他に例を見ない自然の大きな変動と融和しながら現在まで存在し続けている。その空間構成の特徴を明らかにすることを目的とする。



05.04.01-05.05.20
測量の授業にもぐりこみ
実測をすると決めたものの、測量や実測のすべを全く知らなかった3人(横山、蔡、木村)。
測量学の授業にもぐりこむ。カンボジアの集落を実測することを小林明石先生に話し、協力を求める。小林明石先生には僕たちの調査に大変興味を持っていただき、手取り足取り測量の技術を指導して頂きました。測量器材を買い揃え測量の授業で実践。試行錯誤を繰り返し集落の測り方を考えていった。


05.05.13
神戸芸工大の斉木研究室を訪ねる
斉木先生に実測図面のいろはを教わりました。
実際の実測図面の調査時の下図、全体構成ができあがるまでの過程を生のメモ・図面を見せていただき、詳しく教えていただきました。中には鈴木成分先生の直筆調査メモなどもあり、非常に興奮しました。


05.05.20-05.06.19
乾期調査開始

参加メンバー
横山(M2)、蔡(研究生)、木村(M1)、佛願(B2)、岡本(神大B3)、江川(教授)


05.05.20
カンボジアへ出発

横山・蔡・木村の三人が関空からホーチミン(ベトナム)経由でシェムリアップ(カンボジア)へ。リーナ(日本語のしゃべれるカンボジア人)のいるSAVY G.H.に泊まる。リーナを一ヶ月雇う。



05.05.21-05.05.25
村に泊まるためのいろいろ

21日/
村への道のりは悪路のため道を下調べ。荷物も多かったため船で村へ行くことにする。
22日/
早朝から村を目指す。船着場までバイタクと車で行き、そこから船に乗り換え。乾期のためトンレサップ湖の水深は浅く、みんなで船を押すことも。村に着いたのは出発から6時間後。宿舎と食事の契約をかわす。その日は村に何事もなく泊まった。
23日/
朝から調査を始めたが、村の警察に追い出される。シェムリアップの警察署で事情聴取を受ける。村に泊まるには許可書がいるらしい。
24日-25日/
許可書をもらうために走り回る。役所・警察・関所みたいなところ。いろんな人のサインと書類の確認が必要らしい。
無事、許可書を手に入れて、村に戻ることができた。


05.05.26-05.05.27
やっと本格的に調査開始

村には乾期のため水がない。だからこの時期に実測調査に来たのだ。まず全体の配置から押さえていく。休憩時間ごとの試行錯誤でだんだんと要領をつかんでいく。27日-29日の間、リーナが街へ仕事をしに帰る。
夜は虫のシャワーと暑さで一日目は眠れなかった。しかし、僕らが泊まっている建物からのsun rise , sun setはとても美しい。



05.05.28-29
岡本さんが合流
神戸大の三回生岡本さんとサムさん(日本語のしゃべれるカンボジア人)が仲間に加わる。メンバーが加わり気分が一新され、モチベーションもあがった。
建物内部の調査も始まる。建物の開放感、村の人のオープンな人柄もあり、内部にすんなり入らしてもらうことができた。
29日は岡本さんの誕生日。宿にあった曲がりくねったロウソクでささやかにお祝いした。



05.06.01
江川先生・佛願が合流

横山が前日にシェムリアップに迎えに行き、この日二人を村に連れてきた。
村へのアプローチににくい演出をした。街からトンレサップ湖沿いをパジェロで突き進む。トンレサップ湖の水平線と木々の地平線にはさまれる景色を堪能しながら。ちょうど村の真南に到着すると船に乗り換える。村の脇を流れる川からアプローチ。川は森に囲まれ、あたりは見渡せない。村の人の船と入れ違い、川で遊ぶ子供の風景があらわれる。しばらく進み、カーブを曲がった瞬間一直線に並ぶ集落が現れ、気持ちが高まる。
村で先生たちと合流し、村を案内してから昼食。なまずのしゃぶしゃぶ、その他すごいご馳走だった。
夕方からは調査を再開。先生は村を歩き回り、ある家のテラスで風を感じ一休みしたりととても気にいってもらえた様子だった。



05.06.02
前半調査の打ち上げ

午前中調査をしたあと、午後からはシェムリアップに移動しディナー。クメールの音楽と踊りのなか食事をした。



05.06.03
木村疲れがたまっていてダウン

前日のディナーで食べ過ぎてダウン。調査の疲れも溜まっていたのか一晩中トイレにこもり、体が熱っぽかった。この日は江川先生、蔡、佛願とアンコールツアーの予定だったが、腹痛と発熱のせいで1日ベッドに横になっていた。
夕方、アンコールツアーの三人はくたくたになって帰ってきた。ガイドに色々連れまわされた様子。
その後夕食をたべて江川先生は帰国した。その次の日、岡本さんも帰国。


05.06.04
調査再開

朝からカンポンプロックに戻り調査再開。後半戦の始まりだ。
A、B、C、Dと4つのエリアがあるうちのCDエリアは前半に調査を終えた。この日からABエリアの調査。こちらもまずは配置をおさえていく。この日は基準線となる糸を通りに張って作業終了。


05.06.05-07
配置と内部を平行して調査

横山、木村、リーナの三人は配置をおさえる。蔡、佛願は内部調査。
配置調査には通りに張った基準線の10mごとにマークが重要になる。このマークに初めは日本で買っていった測量鋲と明示版で点を打っていたが僕らが目をはなすと子供たちに引っこ抜かれて遊び道具になっていた。これに頭を悩ませた結果、打開策として空のペットボトルを5cm角ほどに切り、村で買える釘でマーキングしていくことにした。作戦成功か子供たちはそれには全く興味を持たず抜かれることはなくなった。



05.06.08
佛願帰国

6月に入ってから雨季が本格化してきた。毎日スコールが降り一日雨が降り続ける時もある。この村の交通手段はバイクか船しかない。しかし、この時期は季節の変わり目でどちらの交通手段もままならない。陸路は道が舗装されておらず雨水でぐちゃぐちゃになってしまう。車のタイヤは足を取られ進まないような状態。湖路も水が少なすぎて船の底がすってしまう。
この前日にも雨が降り、佛願が無事帰れるのか危ぶまれたが、道が悪いながらも何事もなく帰っていってしまった・・・。


05.06.09
蔡ダウン

調査を続けていると村の人と仲良くなり色々モノをすすめられる。調査中にお酒を勧められることもある。そういう時は軽く一杯いただき、主人と握手を交わす。そして言葉も分からないが、なぜかその場の雰囲気で盛り上がる。こういう村の人たちの触れ合いが僕たちの信頼を生み、調査がはかどることにつながる。
前日、日が暮れたので調査をおえて宿に戻る途中、飲んだくれている3人の村の男に引き止められ、酒を交わすことに。村の男3人と僕たち3人、自家製の米酒をひとつのコップで順番に回し飲み、酒が弱い順に脱落していく。蔡が最後まで残り、現地人と張り合う。横山、木村は早めに脱落して先に宿に帰る。その後、ぐったりとした蔡が帰ってきた。蔡は辛い一晩をすごし、二日酔いでダウン。これまでの疲れが溜まっていたこともあって、この日、蔡は完全休業。



05.06.10
JICA調査団のひと

村の通りを歩いていると向こうから日本人らしき3人が歩いてきた。会釈をし話をしてみるとJICA調査団の地域開発の視察でこの村を訪れたらしい。観光と道路と水道を専門にする三人。名刺交換をしその場は別れた。
調査をつづけてしばらくすると村の端からエンジンのうなる音が鳴り響いていた。そちらに向かってみると車が泥沼にはまり身動きが取れない様子。村の人も集まって車を引き上げるのに必死。僕たちも協力する。泥沼に足を取られて泥んこになりながら車を押す。日本人もカンボジア人も関係ない。困っている人を助けるためにみんなが必死になっていた。みんなの力と頭を使い何とか泥沼から車を脱出させることが出来た。これがあって僕らの帰国前日に食事に連れて行ってもらうことになる。



05.06.11
横山発熱

これまでの疲れが溜まりに溜まりさすがの横山も発熱。この暑い地域で長袖長ズボンにさらに上着と帽子という完璧な発熱症状がでていた。しかし、残り少ない日数で調査を終わらすため調査図面の清書を行っていた。



05.06.13
木村発熱

木村2度目のダウン。
ひとり宿に残って、寝込む。少し目が覚めれば図面の清書作業。
みんなが調査に出かけてしばらくすると、ドアをノックする音が・・・。ドアを開くと村の子供たちがなだれこんできた。カメラや日本から持ってきたものに興味があるようでおもちゃになってしまう。しばらく僕も遊びに付き合わされた。かくれんぼをしたり。少し動いただけで体はぐったり、頭はガンガン。症状が悪化。必死に子供たちに熱が出てしんどいことを伝えると、ひとりの女の子が気づいてくれたらしく、みんなに注意してくれる。やっとゆっくり出来ると思ったら、部屋が散らかっていることにその娘が気づいたらしく、部屋を掃除し始めてくれる。子供たちみんなで。僕には寝ておけという感じで。
ぐったりした僕の横で、せっせと片付けは進んでいく。ちょっと目をつむっているうちに部屋はキレイに片付けられ掃除もされた。
その娘や子供たち、ありがとうございました。



05.06.14-15
雨の日の村の様子

この日もいつものようにスコールが降った。調査中にスコールにあったため建物の床下に雨宿り。雨が降ると子供たちははしゃぎまわっている。通りに出て走り回ったり、大きな葉っぱを傘にして歩いていたり。僕が雨宿りしている横では屋根の樋から落ちてくる雨水の滝にみんな集まっている。大きなバケツやタンクを持ってきて水をくみに来る。頭に小さなバケツを置いて滝にうたれる。その水を大きなタンクに移し変える。兄弟でやってきて家に水を運ぶようだった。雨の日の水くみは子供の仕事のようだ。
スコールが降ったあと、二重の虹が出ていたことがかなりの衝撃であった。



05.06.16
調査終了とお別れパーティー

午前中、中心部のお寺周りを平板で測量し終わり、今回(乾期)のすべての調査が終了した。その場にいた人たちを集めて記念撮影。感極まってみんなと抱きつく。やり遂げた感がとても気持ちがいい。充実した一ヶ月を過ごせた。
夕方からはお世話になった村の人たちをよんでささやかなパーティを行った。村の人たちに食事の準備をしてもらい、僕たちは残った日本食を振舞った。(カップラーメンや味噌汁しかなかったが・・・) テーブルごとにお礼にまわりコミュニケーションを取る。
特に親しかった子供やその家族を宿によんでカラオケなど2次会。深夜まで盛り上がった。また雨季に来ることとこの写真を現像して持ってくることを約束した。



05.06.17
村とのお別れ

村とのお別れは辛い。この一ヶ月間の思い出が頭を駆け巡る。仲良くしていたひとたちが村の端まで送ってくれ、村をたった。また雨季に来ることを楽しみに・・・。
シェムリアップに着き夕方、以前約束していたJICAのひととの食事に行く。そこでこの研究のことを色々話した。自腹で研究をしていること、いちからこの村を見つけそのポテンシャルに引かれ研究のテーマにしたことなど。
こんな話しをして興味を持ってくれたのかいろいろ手助けをしていただけることになった。彼らが持っているカンボジアの資料をいただいたり。ピョンヤンレストランで食事を済ませ宿に送ってもらった。



05.06.18
空中都市カンポンクレアン
カンボジア滞在最終日。カンポンプロックよりも大きな集落があるとききそこを視察しに行くことになる。その村は道の舗装もされていて乗用車でいける場所であった。朝一番から宿を出てその村カンポンクレアンに向かう。シェムリアップの中心地から車で1時間半から2時間ほど。着いた場所はカンポンプロックの5、6倍ほどありそうな大きさ。家一軒一軒もカンポンプロックよりも大きく、お金持ちが多いように感じた。集落の構成としては大きな川が集落の中心を蛇行していて中心の丘に寺や学校などの公共施設、市場や病院も配置され、川の両岸の堤防に沿って4列の住戸の並びができていた。カンポンプロックが空中(水上)集落というならばこのカンポンクレアンは空中(水上)都市と言っても良いほどの大きさであった。
この夜、帰国。



05.05.20-05.06.18
乾期調査終了

参加メンバー
横山(M2)、蔡(研究生)、木村(M1)、佛願(B2)、岡本(神大B3)、江川(教授)、リーナ(ガイド)、サム(ガイド)、サレット(ガイド)