御坊市、島団地
南廊下型立体路地(御坊市営島団地再生1-5期)に関する研究

南廊下型立体路地の利用実態と住民意識調査(設計者の視点から)


和歌山県御坊市、島団地は1959年から1969年にかけて建設された公営住宅と改良住宅からなる賃貸住宅団地であった。物的にも人的にも荒廃し、スラム化の激しい様相をみせていた。
市は1990年に平山洋介(神戸大学)に実態調査を依頼し、その提言を受けて、以後、行政、研究者(平山)、設計者(現代計画研究所・大阪 代表江川直樹)、住民が協働で再生事業、再改良事業にあたり、住民参加型の方式で、建替えによる再生を実現した。
「設計面においては、南廊下型の空中街路(立体路地)ネットワークを持つ立体集落として再生し、立体路地に面したコモンルームの分散配置、分節化された変化と開放性のある住棟配置など、従来の集合住宅にない魅力のある社会的空間の実現に成功した」とされ、「実験的な社会的作品として、現代都市計画の理論と実践に寄与する重要な作品成果を挙げている」として、2001年度日本都市計画学会賞(計画・設計賞)を授与されている。

・研究の目的
南廊下型の立体路地や、陽の当たるリビングアクセスなどの手法は、従前、集落形態の調査成果などからその成果に期待するところが大きいにもかかわらず、まれに実現できても特殊解として大きく日の目を見ることもなく、積極的な議論もされていない。御坊のように、大々的に、それも住民参加型の方式で実現できた例は他になく、経年を経て、その利用実態と住民の住後感を確認し、住環境の風景を含め、総合的に分析評価することは、今後の高齢社会や成熟都市における集住環境を考えるうえで、きわめて大きな意味を持つものと思われる。

・研究内容
研究は、四季や天候によって異なる利用実態を、観察、聞き取り(アンケート)調査の2つの方法で行い、設計時の予測のズレ(があるのかないのか?)を含んだ、丁寧な調査を行いたい。主に、南廊下型の立体路地に現れる様相の正確な調査を、物的、人的、時間的、季節的な側面から行い、合わせて、直接立体路地に面する屋内側の利用実態も調査する。